非対面での不動産契約を後押しするものがIT重説です。
IT重説が可能になったことで非対面の契約が可能になりました。
IT重説とは
IT重説とはIT(Information Technology)と重要事項説明を合体させた造語です。
本来重要事項説明は宅地建物取引士が相手方と対面で説明をすることが義務付けられていました。
現在賃貸借契約では全不動産会社でIT重説が可能となっています。
売買契約でのIT重説は現在社会実験中で、その社会実験に参加している不動産会社のみが売買契約におけるIT重説が実施できます。
賃貸借契約のIT重説と売買契約のIT重説は要件が少し違います。
賃貸借契約におけるIT重説
まず賃貸借契約におけるIT重説はすべての不動産会社で実施可能です。
A不動産はIT重説対応だったがB不動産はIT重説非対応だったということは基本的にありません。(実施できる環境が整っていないなどは別です)
賃貸借契約でのIT重説の要件は以下の4点です。
- 双方向でやりとりできるIT環境において実施
- 重要事項説明書等の事前送付
- 説明の開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
- 宅地建物取引士証を相手方が視認できたことの画面上での確認
現在の全不動産会社が賃貸借契約におけるIT重説を実施できるようになる前に事前に複数の不動産者による社会実験が行われました。
社会実験の段階では指定された不動産業者がIT重説を試験的に実施し、その結果を取りまとめてIT重説の是非を検証しました。
その結果、1000件以上の実験を行いましたが、なんと1件もクレーム。トラブルがなかったそうです。
そのような社会実験を経て現在のようなIT重説が可能になりました。
売買契約におけるIT重説
売買契約においては前述の賃貸借契約の際に行われたような社会実験が行われています。
ゆくゆくは売買契約もすべての不動産会社にてIT重説が実施可能になると思われますが、もう少し時間がかかるようです。
というのも売買契約における重要事項説明のボリュームは賃貸借契約に比べてかなり多く、説明に利用する書類も多数あります。
時間にしても賃貸借契約の重要事項説明に比べて2〜3倍の時間がかかります。
売買契約におけるIT重説の要件は以下の通りです。
- 重要事項説明書等の事前送付
- 同意書の事前取得
- 相手方のIT環境の確認、IT重説に要する見込み時間の通知など
- 説明の録音・録画
- 不動産業者による実施後の検証のための報告
などが挙げられます。
なお現在売買契約のIT重説社会実験参加不動産会社は以下です。
IT重説のメリット
非対面での説明が可能
原則対面だったものが非対面でも可となり、実際の店舗に行って説明を受ける必要がなくなりました。
会社によっては個室で契約手続きが行われるところもありますし、契約手続き自体が長時間に及ぶこともあります。
狭い密閉空間のような場所で説明を受けなくてもよくなります。
日程調整が容易に
実際の店舗に行って契約手続き・重要事項説明を受けるとなると日程調整の問題も出てきます。
移動時間、契約時間を考えるとスケジュールを調整するもの一苦労です。
また、不動産会社のスタッフ全員が宅地建物取引士の資格を持っているわけではないので宅地建物取引士のスケジュールを調整する必要があります。
その点IT重説であればwebで説明を受けることができますのでスケジュール調整が容易になります。
落ち着いた環境で説明が受けられる
不動産会社の事務所で契約手続きをするのは緊張しますよね。
自宅であればリラックスした環境でIT重説を受けることができます。
移動の手間が省ける
大阪の物件を東京の方が大阪の不動産会社仲介で購入する場合には基本的に大阪の不動産会社に行って契約をするか、大阪の不動産会社の宅地建物取引士が東京に行って重要事項説明を行う必要がりました。
IT重説を活用すれば東京にいながら大阪の物件を長距離移動せずに購入することができます。
残りの契約書などは郵送でやりとりをすれば良いので手続きも簡単です。
IT重説のデメリット
ITの環境がなければならない
IT重説を受けるためには当然IT重説を受ける環境を整える必要があります。
テレビ会議のツールなどを利用してテレビ通信を行う必要があります。
そのため環境が整備されていなければIT重説を利用することができません。
周囲を気にしなければならない
IT重説を受ける場所に制限はありませんが、喫茶店のような周りに人がいる環境では落ち着いて聞きにくいですよね。
自宅で受けられれば一番ですが、出先などではゆっくり受けにくいことがあります。
高齢者には分かりにくい
ITに慣れ親しんだ世代にはとくに問題なくIT重説の準備をすることができますが、スマホを使っていないような高齢者には環境を整えるのも一苦労です。
だれかに教えてもらおうにもIT重説の準備をするより不動産会社に行った方が早いなんてことが起こり得ます。
IT重説のこれから
IT重説はこれからさらに活用が進むでしょう。
売買契約での社会実験を経ておそらく全不動産会社で賃貸・売買の重要事項説明がITで行えるようになると思います。
遠方にいながら希望の地域の不動産が購入できるようになるので非常に便利になります。
さらに契約の電子化などでさらに非対面での契約は進む見込みです。
不動産業界でも効率的に契約手続きができるように日々改善しています。
皆さんも便利なIT重説を是非活用してください。